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『ソーラープレーン』
2012/07/21
有限会社 オリンポス
四戸 哲

海外のソーラープレーン事情

 さて先日来、海外からソーラープレーンのニュースが続きます。スイスの冒険家ベルトラン・ピカール氏が主催するプロジェクトの『Solar Impulse』です。10年程前にスタートしたプロジェクトですので、日本でも航空関係者には知られていましたが、いくつかの記録飛行に成功した最近まで、あまりニュースになってきませんでした。

 『Solar Impulse』は史上初めて一昼夜を通して飛行した有人ソーラープレーンです。夜間を飛び凌げるソーラープレーン実現は、実用化への大きなハードルでした。ソーラー電池の進化スピードから、そう遠くない将来に達成できるだろうと想像していましたが、ついにここまで来たか、という感慨を持ちます。他にもアメリカのプロジェクト、『Sunseeker』があります。こちらは『Solar Impulse』とは違い、実用的なモーターグライダーを目指しています。最近ではマッターホルンの頂上越えフライトなどを達成したようです。

 実はこのプロジェクトの主催でパイロットのエリック・レイモンド氏は先駆けること1990年、『Sunseeker-1』で既にアメリカ大陸を横断しています。21回のフライトをつないだクロスカントリーですが、20年以上前のソーラー電池を利用して北米大陸を横断したのですから大変な成果でした。


Sunseeker-1の日本製ソーラーセル

 『Sunseeker-1』は、実は日本と縁の深いソーラープレーンです。この機体に使われたソーラーセルは日本の三洋電機製だったのです。1987年、エリックさんがソーラーセルのスポンサー探しに来日した際、知人の依頼で、私が一日アテンドを引き受けることになりました。その際、私の描いたグライダーの図面を彼に見せたのですが、手加減なく酷評され凹んだのも懐かしい記憶です。北米大陸横断飛行に成功後、この『Sunseeker-1』は一度日本に持ち込まれ、富山県で展示されました。また浜松町のモノレール駅に向かう階段の上に、サンヨーの広告写真看板になっていましたので、ご存知の方も多いかもしれません。

SUNSEEKER@JET'92
(【ジャパン エキスポ富山'92】会場にて)

 ここでいつも不思議に、また残念に思うのは、これらの偉業があまり日本では脚光を浴びないことです。日本のソーラー発電技術がその核をなした『Sunseeker-1』の功績はもっと認知されても良いのではないか、と。例えばSTOL実験機『飛鳥』は、なぜ後継の若者の心を惹く話題と成り得なかったのか。それが日本人の功績でないにしても、1986年無着陸世界一周を果たした『ボイジャー』なども、もっと多くの関心を集めて然るべきではないのか。『鳥人間コンテスト』が30年以上の長きに渡って人気を博していることと、実機への関心とのバランスが取れない印象が、どうしても拭えません。


“支える技術”という言訳

 ところでここ数年、町工場の技術を礼讃する話題が多いのですが、どうも問題の本質から逃げる方便にも聞こえます。製品を企画設計し販売する主体、牽引役は長きに渡って大企業でした。牽引役の条件は本質的に企業規模ではなく、ノウハウの有無ですが、一般に資金規模の大きい大企業側に全体設計のノウハウがあるのは自然です。局所的な製作のノウハウを町工場に頼るのは、全体の効率から合理的な場合が多いのは当然ですがあくまで主体は完全に大企業側にあります。“1/100mmの精度”そのものは商品にはなりません。ですから“高い加工技術”を持っていれば安泰かのような町工場復権の論調には辟易してしまうのです。

 “支える技術”という言葉が頻繁に用いられる度に「何を?」と考えてしまいます。一見控えめで日本人好みの言い回しですが、結局は“寄らば大樹”を包み隠す用途に偏ります。「ウチはボーイングの仕事を請負っている・・・」という広告も、「ではなぜボーイングに相当する企業が日本にないのか?」という疑問が浮かびます。ボーイングは気のいい神様ではないはずです。利害が対立すれば切られるだけでしょう。客観的に見て胸を張って“支える技術”と言えるのは、世界中から引く手あまたで代替えの少ないブリヂストンタイヤあたりでしょうか。将来に渡ってモータリゼーション全体を支える技術です。特定の親方を支えてきた技術は、親方の消滅と共に価値を失う事になります。


MV-22オスプレイ

 最近話題の『MV-22オスプレイ』にしても、配備の是非以前にこんなモノが自分等には作れるのか?これを作れる国と戦争する羽目になったら勝てるのか?と考えるのは普通の神経だと思います。局地間の高速大量輸送システムとして驚異的な性能の航空機です。災害対策用としても比類無い能力を持っていますから、その内、必ずこれに助けられる日も来ましょう。

 少し論点がズレる様に感じるかもしれませんが、呑気に“ボーイングを支える”などと誇ることと、相手の圧倒的な技術には目を向けず、ただ賛成反対だけを叫ぶのは主体性を放棄する同じ態度に見えます。因みにオスプレイはボーイングのグループ会社製です。本当なら“ボーイングを支える”自慢の日本企業が安全な国産救難機を作るか、オスプレイの問題点を解決してやるくらいの気概を示して欲しいところです。


目標に主体的な関与を!

 町工場のオヤジが、下請け悲観論を展開するのも妙ですが、はたして悲観してはいません。 世界的に見てもソーラープレーンの実用化までには、まだ多くの技術的課題が残っています。構造の軽量化、ソーラーセルの変換効率や寿命、バッテリーの高密度化など、それは全てこれからの社会にとって切望される技術です。どれもそれぞれ大学や企業の研究施設でひっそりと進展させれば済む事であれば、敢えて今、ソーラープレーンなど作る意義は無いように感じるかもしれません。ひいき目に見ても直近、世界のエネルギー問題の解決には直結しません。ではなぜ海外ではソーラープレーンが作られるのでしょうか。

 言うまでもなく“明快な結果の出るチャレンジ”に参加することは、参加者全体の意欲を否応なしに高めるからです。スポーツやレースが人の闘争心に火をつけるが如くです。単に要素技術の高さを誇っても本当のやる気は出てきません。明確な目標に積極的に関与する姿勢を持ちたいと切に思います。遠くはアポロ計画のように一見壮大な浪費が、結局大きな社会変革をもたらしました。冷戦など、背水の陣が下敷きになっての挑戦でしたが、それもまた人間の性でしょう。日本人にとって今がその時だと思います。


国産有人ソーラープレーンプロジェクト

 私共がサレジオ高専 渡邉研究室と共同で進行中のソーラープレーンプロジェクトは、海外の名だたるプロジェクトには及びも付かない規模ですが、少なくとも確実に有人フライトを実現できる途上にあります。滑空機としての飛行は既に確認し、現在はソーラーパワーによる動力を搭載する作業に着手しました。今後は飛行試験を控え、更に費用を要する段階に進んで参ります。引続き、資金、機材を問わずスポンサーを募集いたしております。是非、皆様のご支援をお寄せください。ご協力をお待ちいたします。

地上滑走試験の様子


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