創立33周年を迎えて
33周年を迎えました。昭和60年に創業し約1/3世紀、どうやら平成の全期間を全うできそうな今、何とも表現し難い感慨が湧いてきます。まずは常ながら、長きに亘ってオリンポスを支えて頂いている皆様に心より感謝いたします。SNS等を通して頂く励ましのメッセージも大きな力になっております。
昨季はこれまでに無いほどの遠征回数を記録しました。ソーラーフライトプロジェクトの集大成、周回飛行は佐渡から場所を移して、8月北海道に渡ってのチャレンジとなったわけです。残念ながら周回は達成できませんでしたが、現在の機体のポテンシャルを十分示す旋回飛行を見るとこができたのは本当に幸せな事です。ここに改めてソーラーフライトプロジェクトにご支援、ご協力頂いた皆様に御礼申し上げます。
ソーラーフライトプロジェクトは、15年前ひとりの少年、Sの「飛行機の設計を教えて欲しい!」という熱意に負けて指導した折、設計課題として生まれたグライダーでした。紆余曲折の末、新たなY少年との出会いによってソーラープレーン『SP-1』として生まれ変わったものです。最初の少年Sは後にアメリカ合衆国ボンネビルでHONDAチームを率いて速度世界記録を出し、少年Yは今回のソーラーフライトの製作に操縦に、と活躍した棟梁横山です。もちろん秀でた若者が他にも何人か参加しなければ、この成果はありませんでした。
現在オリンポスには、40代後半が一名のほか、皆20代半ばです。私自身は今年57歳、完全に彼等の親の世代になります。コアになるべき30代がいません。過去に私の下で活躍した素晴らしい青年達をゲットできなかったのは私の力不足でした。しかし単に“30代”のメンバーが欲しいのではなく、“力のある”メンバーが欲しいのですから、まあ現状は満足すべき状況にあるのかもしれません。
しかし最近多くの企業が30代後半~40代の中堅層に実力者がいない、あるいはその世代そのものが抜け落ちている事情を耳にします。バブル崩壊後の雇控えが原因でしょうけども、何とか就職した先でも現在の40代は仕事を覚える環境が乏しかった様です。先日、物価変動を考慮した1970年との収入の比較を見て驚きました。20代、50代はさほど変わっておらず、40代が際立って収入が低いとの事です。低成長期の影響をもろに被っているのが見て取れます。
この事は、単に40代悲哀物語ではなく、社会全体の問題になっている様です。例えば次の部長候補がいないとか、新人に仕事を教える世代が高齢化して気力体力が続かないなど、人間社会が安定的に世代交代するのに必要な連続性が切れてしまっています。最近の日本の産業の衰退はこれが大きな原因ではないかと私は感じています。やはり教わるか見せてもらうかしないと人は技術を修得できません。もし現代の少年を縄文時代にタイムスリップさせたら、結局何もできないでしょう。世代の空洞化はかなり重大な事態です。
最近、ネットの経済情報関係メディアにインタビューを受けて、日本の航空産業に対する私の意見を話す機会を頂きました。だいぶ渋い話に終始しましたが、すべては「飛行機を創る文化」の消失に端を発しているように思います。この原因もまた世代間の技術継承の失敗にあると確信しています。実際、私が実効性のある飛行機設計技術を教わったのは大学ではなく、ほぼ学外の先達たちです。明治生まれの祖父の世代のエンジニアすらいます。普通なら父の世代から教わるはずの循環、つまり“大学”は設計技術屋になるためにはほぼ無力なシステムです。ただし、学内外の“優れた人達を知る機会”を得る貴重なサイトではあります。もし自力で“学びの場”に身を置けるなら、今の大学は高額な学費を払って4年を費やす価値のある場所ではありません。
そんな自らの経験を踏まえ、大学に代わり、あるいは大学をサポートし本当の学習の機会を何とか創出できないか、と常日頃考えております。航空技術に関する隙間を短期間で埋める妙案は無いものかと。今の回答として我々オリンポスが提案するのはプライマリーグライダーの製作と飛行です。10代の内に飛行機の製作、飛行に親しめる環境が用意できれば、後は少年が勝手に学習し成長していってくれます。我々はその起爆剤を仕込めばよいのです。学習は憧れや希望の先にあるものです。まず楽しさや驚きから全ては始まります。プライマリーグライダー『FOP-01』は夢の起爆剤として、最高の機能を発揮すると信じております。
今回はこの『FOP-01』発表を控え、弊社ホームページも一新、『赤とんぼ』の進捗と合わせて活動を公開して参ります。どうかこれからもオリンポスの明日にご期待ください。
2018/06/01
有限会社オリンポス
代表取締役 四戸 哲